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孫社長、バケツで氷水をかぶり「さむい!」

 「総務省に火をつける」発言など、3大キャリア随一の瞬間火力でグループ2万人の社員を凍りつかせたことでも知られるソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏。連日の暑さにやられたのか、あるいは話の通じない米規制当局に業を煮やして奇行に及んだのか――。

 ――というわけではなく、この行水パフォーマンスは、難病であるALS対策の啓発チャリティーとして行ったもの。人型ロボット「Pepper」の製造のほか、iPhoneの製造を担当することでも有名なFoxconnの会長兼CEO テリー・ゴウ氏から“無茶ぶり”(指名)される形で行ったこのパフォーマンス。すでに米国では米AppleのCEOであるティム・クック氏やFacebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏、ビル・ゲイツ氏など、著名なVIPがこのチャリティーに参加する形で氷水をかぶっている。

 氷水をかぶる際には次の挑戦者3名を指名するのもお決まりとのことで、氷水をかぶる直前、氷水のプールの中でバケツを持った孫氏は、ヤフーの宮坂社長、ガンホーの森下社長、Supercellのイルカ・パーナネン氏の3名を指名していた。

 孫氏は勢い良くバケツの氷水をかぶると、かたわらに用意されていた大きなタライに盛られた氷の山も、一気にかぶった。最後にはプールから可愛らしいジョウロを取り出して頭にかけるなどサービス満点なパフォーマンス。

 氷水をかぶって開口一番「さむい!」と叫んでいたが、駆けつけた多数の社員からは拍手が送られ、報道陣も多数詰めかけたとあって、注目を集めるという役目は果たせた様子。もっとも、プールから出ると「お父さん」の顔のフードが付いたローブを身にまとうなど、アピールにも抜け目はなかったようだ。

 ちなみに「私の前髪は危機的状況だが」(孫氏)などと自身で度々自虐ネタにしてきた孫氏の頭髪だが……冷水を浴びせかけられてもしっかりとふんばっていた様子が確認された。大型買収を断念したばかりのはずだが、水には流せない矜持もあるといったところだろうか。

 孫社長は冒頭、集まった報道陣や社員に対し、難病であるALSの説明を行った。孫氏が子供の頃に尊敬していたという米メジャーリーグのルー・ゲーリック選手が患ったことで有名になった病気で、「対策が十分にできていない。一刻もはやく対策をすべく、また多くの人にこの病気を知ってもらいたい。そういう意味でのチャリティー。少しでも広まるといいなと思っている」とコメントしている。

氷水をかぶる前、チャリティーについて説明する孫正義氏

 難病医学研究財団が公開している情報によれば、ALS(筋萎縮性側索硬化症)は公費負担の対象となる「難病」で、神経が障害を受けることで、筋肉を動かす命令が脳から伝わらなくなり、筋肉がやせていく病気。一方で、感覚や知能、内臓などはすべて保たれることが普通とされている。

 日本においては約9000人が患っており、男性が多く、最もかかりやすい年齢層は60~70歳代という。ALSの原因は不明で、神経の老化に関連があるとされている。常に進行する病気のため一度かかると症状が軽くなることはなく、大多数の患者は筋肉の衰えが呼吸筋に及び、呼吸不全で亡くなっている。治療法として、進行を遅らせる薬の使用や、症状を軽くする対症療法が用いられる。

 日本ではALS患者の自然経過を調査したデータが少なく、厚生労働省が、臨床情報と遺伝子情報を併せた形で全国調査を開始している。

太田 亮三