石野純也の「スマホとお金」

ハイエンドスマホをおトクに手にできる、ソフトバンク「新トクするサポート(プレミアム)」始動――これまでの「新トクするサポート(バリュー)」との違いは?

 ソフトバンクは4月18日に、端末アップグレードプログラムの「新トクするサポート(プレミアム)」を導入しました。最短1年での買い替えを実現するもので、48回中、36回の支払いが免除され、実質価格を抑えられるのが特徴です。「iPhone 15 Pro」や「Pixel 8 Pro」「Xperia 1 V」など、ハイエンドモデルがこの買い方の対象になっています。

ソフトバンクは、新トクするサポート(プレミアム)を18日に開始した。ハイエンド端末が対象の新しい買い方だ

 一方で、23年12月に、電気通信事業法の省令改正によって誕生した「新トクするサポート(バリュー)」も併存させています。ただし、対象機種は開始当初から縮小しており、現在、スマホの対象機種は「iPhone 15」のみとなっています。新トクするサポート(バリュー)も同様に実質価格を抑えた1年での買い替えをしやすくする仕組みでしたが、「新トクするサポート(プレミアム)」は、「新トクするサポート(バリュー)」とどこが違うのでしょうか。その仕組みを解説していきます。

約1年で機種変可能。ただし早トクオプション利用料がかかる

 新トクするサポート(バリュー)と、新たにスタートした新トクするサポート(プレミアム)は、いずれも1年で実質価格を抑えながら機種変更できるのが特徴です。ただし、前者は13カ月目の申し込みが基本なのに対し、後者は「新トクするサポート(スタンダード)」と同じ25カ月目での申し込みを中心にしつつ、13カ月目の早期機種変更を可能にしている点に違いがあります。

 具体的に言えば、13カ月目での利用には「早トクオプション利用料」という料金が追加でかかります。この金額は端末によって異なりますが、最大額は1万2100円。さらに、端末には保証サービスの「あんしん保障パックサービス」をつける必要があります。こうした料金がかかる点が、新トクするサポート(バリュー)との最大の違いと言っていいでしょう。

13カ月目で返却し、以降の支払いをしない場合には、早トクオプション利用料の支払いが必要になる。25カ月目以降の場合はこれがかからない。現状は、どのモデルも1万2100円

 約1年での早期利用に料金がかかる点や、保証サービスが必須になっている点は、ドコモの「いつでもカエドキプログラム+」とほぼ同じ。ドコモは24回目の支払いを残価として高めに設定しているのに対し、ソフトバンクは単純に48回に分割した代金の36回分を免除するのが2社の違いと言っていいでしょう。特に条件がなかった新トクするサポート(バリュー)と比べ、やや利用のハードルは高まっています。

ドコモのいつでもカエドキプログラム+も、13カ月目から22カ月目の利用には、早期利用料がかかる。ソフトバンクの仕組みは、これとほぼ同じだ

 新トクするサポート(バリュー)の場合、シリーズの中でもっともスペックが高いフラッグシップモデルというより、一段、価格帯が低いハイエンドモデルがラインナップの中心でした。グーグルの「Pixel 8」や、シャオミの「Xiaomi 13T Pro」などは、その一例と言っていいでしょう。これに対し、新トクするサポート(プレミアム)はPixelであればPixel 8 Pro、iPhoneであれば「iPhone 15 Pro Max」といった形で、最上位モデルが含まれています。

 そのため、1年での実質価格もそれなりに上がっています。iPhone 15 Proの128GB版であれば、1カ月あたりの支払額は3666円。13カ月目に機種変更の申し込みをした場合、支払いの総額は4万3992円になります。ここに早トクオプションの1万2100円もかかるため、トータルの支払額は5万6092円に。18万円を超える端末をこの支払額で使えると考えれば割安なのかもしれませんが、実質12円のようなインパクトはありません。

iPhone 15 Pro(128GB版)の価格例。1年で機種変更した場合、実質価格は4万3992円。ただし、早トクオプションが1万2100円かかり、合計額は5万6092円に上がる

MNP利用時の割引額を増額し、1年実質24円を実現

 一方で、ソフトバンクはこのタイミングに合わせ、他社からMNP(番号ポータビリティ)で乗り換えた場合の「オンラインショップ割」を増額しています。その最大額は4万3968円。対象となるのは、アップルのiPhone 15 Proと、グーグルのPixel 8 Pro。ソニーのXperia 1 Vや、シャープの「AQUOS R8 pro」も同額の割引を受けることができます。

オンラインショップ割を法令の上限に近い4万3968円に増額している

 例えば、iPhone 15 Proの場合、先に挙げたように13カ月目に端末を回収に出すと、支払いの総額は4万3992円で済みます。ここから、オンラインショップ割の4万3968円を引くと、その差額は24円に。1カ月あたり、2円の支払いで済んでしまう格好です。同様に、Pixel 8 Proも12カ月間の支払額は2円になり、トータルでの支払い額は24円になります。回線契約に紐づいた割引を増額することで、フラッグシップモデルを割安に購入できるようにしているというわけです。

 ただし、先に述べたように、13カ月目での機種変更には早トクオプション利用料がかかります。その額は、いずれのモデルも1万2100円。これを実質負担額だとすると、トータルでの金額は1万2124円になります。それでも、iPhone 15 ProやPixel 8 Proのようなハイエンドモデルが1万円台前半で利用できるのは魅力的。性能の高いスマホを、短期間で乗り換えたい人にはいい仕組みと言えます。

iPhone 15 Pro(128GB版)の価格例。4万3968円の割引で、1年目の支払いがほぼほぼ相殺され、実質価格は24円に下がる。早トクオプション利用料の1万2100円はかかるが、現行のハイエンドモデルとしてはかなり安い

 割引額を増額できたのは、ガイドラインの改正で割引の上限が最大4万4000円に引き上げられたためです。この改定では、端末単体への割引も含められる形になりましたが、代わりに4万4000円から8万8000円までの端末は価格の50%、それを超える端末は4万4000円が上限になっています。オンラインショップ割は、その上限ギリギリまで割引をつけることで、価格を抑えていることがうかがえます。

昨年12月に改正された割引上限の仕組み。上限が税込みで4万4000円に上がった一方で、端末単体を割り引く白ロム割も規制された

 ちなみに、新トクするサポート(バリュー)の時には、MNPでつくオンラインショップ割が、2万1984円でした。これを適用した場合のみ、一部の端末の実質価格は12円になっていた格好です。逆に言えば、機種変更など、オンラインショップ割がつかない場合でも、2万1984円高くなるだけでした。これに対し、新トクするサポート(プレミアム)の端末は、割引がないと4万3968円、価格が上がってしまいます。

 その意味で、新トクするサポート(プレミアム)の方が、回線契約に重きが置かれていると言えるでしょう。ハイエンドモデルを武器に、より他社からの回線獲得をしやすくなっている仕組みと見ることもできます。ソフトバンクで機種変更をしているユーザーのお得度や、端末単体で購入するユーザーのお得度はやや下がってしまっているのが少々残念です。

一部モデルはMNP割引が限定的、ガイドラインはギリギリでクリアか

 もっとも、オンラインショップ割が4万3968円に設定されている端末は、上で挙げた一部の端末にとどまっています。逆に、新トクするサポート(プレミアム)の対象端末でも、iPhone 15 Pro Maxや「iPhone 15 Plus」に関しては、割引額が2万1984円にとどまっています。

 そのため、iPhone 15 Pro Maxは、MNPで契約したとしても、1年での実質価格は4万3356円かかります。ここに1万2100円の早トクオプション利用料も発生するため、負担額は5万5456円に。同じiPhone 15シリーズでも、iPhone 15 Proとの差は比較的大きいと言えるでしょう。売れやすく、かつソフトバンクが推したい端末がiPhone 15 Pro Maxではなく、iPhone 15 Proであることがうかがえます。

同じ新トクするサポート(プレミアム)対象のiPhoneでも、iPhone 15 Pro Maxはオンラインショップ割が2万1984円と少ない。iPhone 15 Proもストレージ容量によって異なり、512GBと1TB版は割引額が抑えられている

 Androidも同様で、Pixel 8 ProやXperia 1 V、AQUOS R8 proはオンラインショップ割が4万3968円になっている一方で、発売されたばかりの「Leitz Phone 3」に関しては2万1984円の割引にとどまっています。Leitz Phone 3は、元々の価格も19万5696円と高額なため、12カ月ぶんでも支払額は5万9940円に上ります。ここに早トクオプション利用料を加えると、総額は7万2040円に。2万1984円の割引を受けても、5万円を上回ります。

 どちらかと言えば、売れ筋の端末がより優遇されているような印象。最上位モデルの大画面版だったり、ライカ監修のコラボモデルだったりの、販売量が少ないモデルはそれなりの価格がつけられていることが分かります。

Androidも同じで、Leitz Phone 3はMNPでの割引が少ない。また、iPhoneと同様、Pixel 8 Proも割引額が大きいのは128GBと256GBのみとなる

 ちなみに、オンラインショップ割を上限ギリギリに近い4万3968円まで出してしまうと、端末本体の割引は32円までしかできないことになります。先に述べたように、改正されたガイドラインでは、回線契約に紐づかない端末単体の割引も、上限の内数に入るようになったからです。そのため、iPhone 15 ProやPixel 8 Proといった端末は、免除される金額が中古店などの買取価格を上回ることが難しくなります。

 ソフトバンクが公開している「買取等予想価格一覧」を見ると、iPhone 15 Proは13カ月目で13万6400円、Pixel 8 Proは10万4200円と予想されています。iPhone 15 Proは、13カ月目に返却すると14万1768円が免除されます。これだけだと買取予想額を超えているため、差額が割引であると見なされそうですが、早トクオプション利用料まで加味すると、免除される金額は12万9668円に下がります。結果として、本体からの割引は1円もしていない計算が成り立ちます。

13カ月目の買取予想価格を抜粋。免除される36回分の支払額は、これを上回っているため割引と見なされそうだが、早トクオプション利用料があることで相殺され、本体の割引はしていない形になっている

 詳細は省きますが、Pixel 8 Proも同様の設定がされています。ソフトバンクの出している買取等予想価格が一般的な中古店より高めであることは置いておくとしても、価格設定的には、かなりギリギリでガイドラインに違反しないような設計になっています。買取予想額をどう見積もるかで変わってしまいそうな感もありますが、新トクするサポート(プレミアム)も、ガイドラインの限界を攻めたプログラムであることが見て取れます。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya